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BTSの成功とブランディングの関係性を考える

現在世界的な人気を誇るボーイズグループBTSをご存知だろうか。なぜ彼らが成功したのか、さまざまな要因があると思うが今回はブランディングとの関係を考えてみたいと思う。

ここで言うブランディングとは、コンセプト、ストーリーを差す。

デビュー当初からの一貫したグループコンセプト

現在はBTSと呼ばれる彼らのデビュー当初の表記は「防弾少年団(日本語表記)」である。このグループ名には、「10代・20代に向けられる社会的偏見や抑圧を防ぎ、自分たちの音楽を守り抜く」という意味が込められている。その名の通り、BTSの楽曲には、当初は10代、20代が感じる生きづらさや社会への怒りを表現した楽曲が多かった。しかし、彼らが成長するにつれ、楽曲のメッセージも、ファンや自身の痛みに寄り添い、自分を愛することの大切さを歌った楽曲へと変化していった。そして、彼らが楽曲の作詞作曲に参加していることが、よりファンの共感へと繋がっている。

また、BTSの成功には、SNS戦略が大きく関係している。韓国では弱小事務所が成功することが難しいと言われている中で、BTSはデビュー当初(2013年)から世界中へ発信できるYouTubeやTwitterなどのSNSを使用していた。

これもマーケティング的な戦略だけでなく、きちんとグループコンセプトが関係している。

プロデューサーのパン・シヒョク氏は、BTSをつくる際に、「これからは孤独な人が増える時代になる。彼らはそんな人たちに寄り添える存在になるんだ。」というようなことを語っていた。その言葉の通り、彼らは積極的にSNSでファンとの交流を図り、ファンの身近な存在になることに成功した。

連続したストーリーで構成される壮大な世界観

BTSのアルバムは、ストーリー仕立てになっており、多くのアルバム同士が繋がっている。特に2015年~2017年ごろのミュージックビデオはドラマ仕立てになっていることが多く、新しい曲が発表される度に、ストーリーが続いていくという構成になっていたため、多くのファンがミュージックビデオに込められた謎や意味を解くことに夢中になった。

この壮大なストーリーも、グループコンセプトに関係したストーリーになっている。

まず2013年-2014年ごろに発表された学校三部作と呼ばれるアルバム3枚では、自分たちが夢へと向かう姿や社会への怒りなど等身大の彼らの悩みや葛藤が表現されていた。

そして2015年-2016年に発表された花様年華シリーズは、7人が学校を卒業し、少年から青年へと成長する過程の苦悩や葛藤を描いている。

2016年に発表されたWINGSでは、ヘルマン・ヘッセの『デミアン』を元にストーリーが作成されたと公式から発表されている。ヘルマン・ヘッセの『デミアン』は、ユング心理学を元にしており、少年が青年へと成長する過程で「自己を探究する」過程を描いた小説である。

2017年-2018年のLOVE YOURSELFシリーズでは、その名の通り「あなた自身を愛して」というテーマでアルバムが制作されている。

2019年-2020年のMAP OF THE SOULシリーズでは、マレイ・スタインの『ユング 心の地図』が元にされている。このシリーズも花様年華から続いているストーリーと繋がっており、苦痛と悩みの意味を見いだし、魂の地図を見つける、というテーマがある。

全てのアルバムにコンセプト設計がしっかりとされており、またそれぞれがストーリーとして一貫して繋がることで、アルバムの意味や影響力を高めている。

また、2017年にBTSの所属事務所であるBig Hitエンターテインメント(現:HYBE)とユニセフはLOVE MYSELFキャンペーンを支援するためのパートナーシップを結び、リーダーのRMが国連でスピーチをしている。こうして社会的にもBTSのメッセージを広めている。

設計されたわけではないが多くの人の心を打つストーリー

BTSは、最初から売れていたわけではなかった。毎年数えきれない数のアイドルがデビューする韓国で、大手事務所でも成功するアイドルが一握りの中、BTSは弱小事務所からのデビューだったため、当初は「すぐ消える」「パクリ」などと言われていた。自分たちの公演のチラシを路上で配ったこともあった。

そんな中、彼らはたゆまぬ努力を積み、その葛藤する様子をYouTubeのログに残したり、ブログやTwitterに書いたり、曲に込めたりして表現する中で、次第に彼らへ共感し、応援するファンが増えていった。ARMYと呼ばれるファンは、そうした彼らの努力や苦しみを知っているため、熱心にYouTubeのMVを再生したり、BTSが賞を取れるように音楽授賞式まで毎日彼らへ投票したり、彼らの魅力をSNSなどを通して拡散したりと熱心に活動したこともBTSの成功に大きく関わっていると言われている。

弱小事務所から世界的人気を誇るアーティストになったというストーリーは、BTSのブランドをより一層強くしているように思う。

一見ネガティブに捉えられるような経験を共有することで、他者の共感を得られることは多い。実際、熱心なARMYの多くは、この彼らのストーリーに共感した人たちだろう。

まとめ、追記

ストーリーには、ブランドの意味を強め、一貫性を高め、影響力を増幅する力がある。
ブランディングをする際には、是非ストーリーを設計することをおすすめしたい。

また、BTSは2017年には新しいロゴとともにブランドアイデンティティを発表している。デビュー時から防弾少年団を表現してきた「10代の抑圧と偏見を防いでくれる少年たち」という意味を維持しつつ「現実に安住することなく、夢に向かって絶えず成長していく青春」という「Beyond The Scene」の意味を加えた。
Big Hitエンターテインメント(現:HYBE)は「時間の流れに従って、アルバムのコンセプトや活動などをひとつにまとめられるように、すべてに当てはまる未来志向的な概念で、防弾少年団のブランドを定義して視覚化した」と説明している。
このブランドアイデンティティは韓国のトップコンサルティング会社が企画段階から会社役職、防弾少年団のメンバーはもちろん、リサーチやFGI(特定の目的でマーケターが話し合いをするために集められたグループ) で収集されたファンの希望を詰め込んで、1年近くかけて作ったと説明していることから、やはりBTSはブランディングに力を入れたグループだということを再確認した。

ブランドアイデンティティに関する記事元:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2073585

writing by eriko gomi

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