SHORT Essay
ショートエッセイ
空想旅行のすゝめ 03 “引きこもりによる空想旅行”
空想旅行のすゝめ
頭の中はとっても広いから、旅に出よう
第二弾は旅をテーマにしました。
今はコロナで、旅に出ることはできません。
でももしできるならどこに行きたい?何をしたい?
さてさて、第3弾は引きこもりによる空想旅行です。
■ 旅行をしたことがない私
コロナ禍が始まって有に一年を通り越した。
私は仕事の時も、お休みの時も、基本的には家にいる。
でも、全く苦にならないのは、きっと元来の引きこもりが好きな性格のせいだと思う。
兄弟が多くて、家業は家の敷地内の工場。
いつも誰かいて、人の出入りが激しい環境だった。
土日は、さらに、家族が家にたくさんいる。
図書館へ行って、朝から夕方まで本を読んでいた。
小さい時から頭の中に引きこもる癖があったのだと思う。
自分の好きなもの、感動すること。
集めても集めても、繋がりが分からない。
自分のことって、ずっと一緒にいるのに未だにわからないな、と思う。
だから考えと違和感のない言葉を探す、頭の中での旅行の時間が大好きで
気がつくと何日も家から出ていない、ということにもなる。
庭にすら出ておらず、窓からぼんやりと深くなる緑を眺めている。
■ 旅行をしたことがない私 その2
20代で最初に社員になったのは、都内防衛省の近くにある
小さなグラフィックデザインの事務所だった。
たくさんのことを学んだ。
近くにある、とっても大きな印刷会社のお仕事を請け負っていて、
そこの社員さんであるディレクターと仕事を進めていた。
主な業務は「企業カレンダー」。
企業カレンダーって、とっても、「世界の絶景」が多くて
私はありとあらゆる、世界の美しい風景を目にした。
例えば、美しい水辺―「天空の鏡」ともよばれるウユニ塩湖や、
中国四川省の奥地にある透き通った水が流れる美しい峡谷、九寨溝。
みたことのない景色―一面の白い砂漠には巨大な白い奇岩が点在する、アフリカの白砂漠(ファラフラ)
棚田のように広がる真っ白な石灰棚、パムッカレ
独特な形をしていることで知られるバオバブの木がたくさん生えているマダガスカル。
あまりにたくさんの美しい写真を見過ぎたのかも知れない…
いつしか「行きたい」と思わなくなってしまった。
旅行をする「意義」が分からない。
海外へも行ったことがない。
だから旅行が好きな人と話すと「どうして?」「なんで?」と聞くことがある。 (写真は九寨溝です。)
■ 空想旅行。目指すはずばり!シンガポール!
そんな私でも行きたいところが一つだけある。
それはシンガポールのボタニックガーデンだ。
150年の歴史がある国立植物園である。
私は植物を育てるのが好きだ。
「シンガポールには、観葉植物が自生する姿が見れる」と、
以前、その趣味が昂じて、仲良くなった方が教えてくれたのだが、
その姿は鉢植えからは想像もできないくらい
生き生きとして、大きいのだそう。
そう聞いてから興味がとまらない。
いつか、いつか行ってみたい。
寝そべって、たくさん空気を吸い込んでみたい。
そう思ってみて、ハッとする。
「見る」のと、「空気を感じる」のは全然違うこと。
きっとそれこそが、旅行へ行く意味なのかもしれない。
もしかしたら、頭の中を深く深く潜ることと同じくらい、旅行は楽しいのかもしれない。
今から、少しずつ要るものを揃えて
初めての海外旅行に思いを馳せている。