SHORT Essay
ショートエッセイ

空想旅行のすゝめ 05 “2 度目の修学旅行”

空想旅行のすゝめ

頭の中はとっても広いから、旅に出よう
第二弾は旅をテーマにしました。
今はコロナで、旅に出ることはできません。
でももしできるならどこに行きたい?何をしたい?

さてさて第5 弾は大人の修学旅行のお話しです。

数年ぶりに再会しても、
いつも一緒に笑い転げていたあの頃に
一瞬でタイムスリップをしてしまう友人が
誰しも 1 人や 2 人、いるのではないだろうか。

「空想旅行」と聞いて思い浮かぶのは、そんな友人との思い出だ。

■プロローグ

「今年こそ、紅葉を見に来ない?」
高校時代からの友人 S から一通のメールが届いた。
暦の上では秋とはいえ、昼間は半袖で過ごせる。
まだ夏の余韻が残る9月のことだった。

彼女は関西で就職した。
もう随分会っていない。
そういえば「結婚する」とこの春に連絡が来ていた。

「来年は見においで!」
と毎年、美しい紅葉の写真をメールで送ってくれていたが、
一度も訪れたことは無かった。

結婚のお祝いも兼ねて紅葉見物に行こうか。
「京都の見頃はいつ?」
私はすぐに返信していた。

■修学旅行1日目

11月の終わりに 2 泊 3 日で京都を訪れることにした。

京都は中学校の修学旅行以来 15 年ぶりだ。
今回の旅のテーマは「修学旅行」

友達と旅行することが楽しくて、
“修学”は二の次だった中学校の修学旅行。

大人になって「ちゃんと見学しておけばよかった。」と後悔した。

京都のこの時期は宿が取れない。
何ヶ月も前から予約でいっぱいになってしまう。
彼女が京都に住んでいたから、この時期に訪れることができた。ありがたい。

京都駅に着くと、友人と婚約者が迎えに来てくれていた。
荷物を婚約者に預け、彼女と私は京都の街へ足を向けた。

「修学旅行といえば、ここは外せないでしょう?」
すぐに向かったのは平等院。

10円玉にも描かれ、鳳凰が羽を広げた姿を表していることから
鳳凰堂と呼ばれるようになった阿弥陀堂。
紅葉を見に来たのだが、その時期にはまだ少し早かったようで
庭園の木々は少し色づき始めたくらいで、思っていたほど観光客もいない。

時間に追われることもない、ゆっくり見学しよう。
どちらかが提案したわけでもなく、
私たちはゆっくりとゆっくりと庭を散策した。

私も彼女も、どちらかというと口数が多い方ではない。
ぽつりぽつりと近況を報告し合う。
たまに長い沈黙があってもそれは、私たちの“間”。
(この感じ、懐かしいな。)
そんなことを思いながら、次の目的地へ向かった。

平安神宮では目も覚める朱色に感嘆し、
知恩院では年甲斐もなく鴬(うぐいす)張りの廊下ではしゃいだ。

 

夕食を軽く済ませ、清水寺に向かった。
この時期、ライトアップされるらしい。
緩やかな坂を登ること 20 分。
ライトアップされた仁王門が見えてきた。

その奥の三重の塔も見えて来ると、
歩き疲れていたはずなのに心なしか足取りが早くなる。

「清水の舞台から飛び降りる」で有名な舞台からは赤く染まった木々を見下ろす。
京都に住んでいても、この景色は見慣れるものでは無いようだ。
彼女も無言で絶景を見下ろしていた。

幻想的な世界で、ため息が止まらない。
夢見心地のまま、1 日目が終わった。

■修学旅行2日目

朝は友人が朝食を用意する音で目が覚めた。
しかし、すぐに起き上がれない。
情けないことに半日歩いただけで全身が筋肉痛なのだ。
松本に帰ったら、もう少し運動をしようと 1 人苦笑いをした。

支度のために動いている内に、身体の痛みに慣れてきた。
ぎこちなく動く私を見て、彼女は涙を流しながら笑う。
その姿を見て私も笑う。
一瞬にして、高校生の頃に戻った、そんな感じがした。

修学旅行2日目は体験学習「生地から作る生八つ橋づくりとお抹茶体験」
米粉の状態から生地を作り、餡子を包んだり、いちごをトッピングしたり。
抹茶も点てて、実食。

抹茶は思ったほど渋くなくて、ニッキの香りの八つ橋とよく合う。
この渋みと香りがたまらない。
「日本人でよかった。」と友人と体験学習を満喫した。

今日の目的地は嵐山。
阪急嵐山駅で下り、渡月橋へ向かうと色とりどりの山が目に飛び込んできた。

まだ緑が残る部分もあるが、赤や黄色、橙など、山が色づき始めていた。
山が近い。
松本で見慣れているはずなのに、その景色に圧倒される。
全長 155m ある渡月橋を、他愛も無いことを話しながら歩く。

やがて見えて来たのは見事な竹林。
一歩踏み入れて、上を見上げる。

空に向かってまっすぐ伸びる竹。
竹の葉が重なり合い、陽光がキラキラと差し込んでいる。
今まで赤や黄色、橙など色鮮やかな美しい紅葉を見ていたので、
緑の濃淡しかない景色を見ていると、
まるで次元の違う世界に迷い込んでしまったのではないかと思ってしまう。
平安時代は貴族の別荘地だったと聞き、
1000 年前の平安の人々に想いを馳せるが
タイムトリップはあっという間に終わってしまった。

余韻を噛み締めながら歩いていくと小さなカフェを見つけた。

民家の一部を改装したような造りで、温かみを感じる内装。
少ないテーブル席は満席だった。
私たちはカウンターに座った。
ここでも抹茶をいただく。
時間の流れがゆっくりで、ずっとこうしていたいと思った。
明日の今頃はもう松本に向かう電車の中だ。
そう思うと、急に寂しさが襲ってきた。
また暫くは会えなくなるし、
こんなに贅沢な時間を過ごすこともないだろう。
そんなことを思いながら、嵐山を後にした。

■20 代最後

夜は友人の行きつけだという小料理屋へ向かった。

11 月は友人と私の誕生月で、
この時すでに 30 歳の友人と
これから誕生日を迎えるまだ 20 代の私とで、
どんぐりの背比べのようなくだらない話しで盛り上がる。
2日間、沢山歩いて疲れていたのもあり、いつもより早く酔いも回っていた。
ふわふわとした気持ちでいると目の前にロウソクが点いたケーキが現れた。

プレートには友人の名前と私の名前、
そして「誕生日おめでとう」と書かれていた。
まさかこんなサプライズが待っていたとは!
毎年、プレゼントを贈りあっていたが、
一緒に祝ったのは初めてかもしれない。
驚いたのと、嬉しいのと、色んな感情で胸がいっぱいになる。
幸せな気持ちでいっぱいになった2日目の夜だった。

■修学旅行最終日

昨晩はつい飲み過ぎてしまった。
おかげで少々二日酔い。
友人はケロッとしているので、彼女のざるぶりに関心する。

昼には帰路に着くので、午前中は 1 箇所しか行けない。
急ぎ支度をして、三十三間堂へ向かった。

中学の修学旅行では探すことができなかった
自分の顔に似た仏像を探そうと友人と話していた。

「絶対みつけよう!」
と意気込んでいたが、
いざ 1000 体の千手観音を目の当たりにすると、
その荘厳さに言葉を失い、
ただただ見惚れてしまった。
中学の修学旅行の時ほど観光客は多くなく、
ゆっくりと観音様のお顔を見ることができた。
それでも、自分の顔に似た観音様を見つけることはできなかった。

■エピローグ
電車に乗る前にお土産を買いに百貨店へ足を運んだ。
京都のお土産と言えば、抹茶味のお菓子、八つ橋、あぶらとり紙・・・
色々思い浮かぶが、
友人から「ぜひ!」と勧められたのは
京菓子司 満月の阿闍梨餅(あじゃりもち)。
京都の人たちにも愛される銘菓で、
むしろ京都の人たちは「お土産といえば満月さんの阿闍梨餅。」
と言うくらいだと教えてもらった。
松本で配るお土産の他に、電車の中で食べようとに自分用にも買った。

 

京都駅に着くと、友人はホームまで見送りにきてくれた。
新幹線の指定席を窓側で取っていた。
窓越しに私たち 2 人は新幹線が発車しお互いが見えなくなるまでずっと、手をふっていた。

新幹線が駅を出てすぐにメールを送った。

「今の私たち、遠距離恋愛のカップルみたいだったね(笑)」

「似たようなものじゃない?(笑)」

すぐに返信が届いた。

自分用に買った阿闍梨餅を開ける。
見た目は最中なのだが、食べてみると皮がもちもちしている。
初めて食べる食感だった。

昨晩話したことを思い出していた。

「また 15 年後、修学旅行に行こう!」

あれから時を重ね、2度目の修学旅行から
もうあと数年で3度目の修学旅行の時期がやってくる。

また京都に行こうか。

それとも、高校の修学旅行で訪れた山口・萩に行こうか。

今はリアルな旅行が難しい。
友人と妄想旅行に出かけようと思う。

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