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色の歴史から考える、和風っぽく見える配色の理由
最近、近場の美味しいお店でくつろぐひとときが幸せだと感じている坂口です。
つい先日も友人とカフェでお茶をしたんですが、その時注文したケーキがサーモンピンクと薄黄緑のクリームのケーキで、二人して「和風で可愛いね」という話で盛り上がりました。洋食であるケーキでも配色によって和風に見えるので、色の感情効果ってあるんだなと感じた出来事です。
でもなぜ和風の配色はこの色と定められている訳でもないのに、色だけで和風っぽいと感じるのでしょうか。日本で使われていた色っていったいどんなものだったのでしょうか。今回は和風っぽいと感じる色の感情効果の理由を考えるために、日本の色ってどんなものが使われてきたのか、日本の色に関する文化を調べてみました。
日本の色の歴史
聖徳大使が使用していた紫と冠位十二階の色位
手始めに日本史に教科書を開いて見て、色に関する文化として聖徳太子の冠位十二階が一番初めに目に入ります。聖徳太子は天皇中心の国づくりを目指し冠位十二階を制定し、各家柄に与えられていた役職を一人一人能力のあるものに与え、それぞれの役職に色を決めその冠を着用するように命じました。冠の色については様々な説がありますが、紫・青・赤・黄・白・黒の6色で区別されています。
その中で一番位の高い色はずっと”紫”でした。現代は様々な染色方法がありますが、当時の日本では紫に染色するためには植物の根や貝から染色していました。鮮やかな紫色を作るのに非常に手間がかかったり、材料自体が珍しいということもあり、紫色は大変貴重でした。そのため紫一番位の高い人が身につける色とされていたようです。また役職の低い人が自分の役職以上の色を身につけることは禁色とされ禁じられていました。
政治に色が使われていることも興味深いですが、もっと興味深いのは役職による色の制約が近代まで残っていたこととや、現代でも多くの場所で高級感を表す配色として紅や紫、濃い色を使用した配色が使われていることです。
かさねの色目、平安時代
禁色の制約が少し穏やかになった平安時代では、十二単の色など日本の歴史の中でも色彩への意識が高まる時代です。平安時代には文字が美しいこと、音楽の才能、和歌の知識があることが教養があると言われる為に必要なことでしたが、季節にあった色彩をセンス良く取り入れられることも作法のひとつで、これも教養の一つとされていたようです。和歌を詠むことや衣を季節に合った配色にすることから、配色を決める為に感じる為に季節を感じるということを大切にしていたことが伺えます。平安貴族の衣の裏地と表地の色の組み合わせや、衣を重ねるなどして組み合わせた色はかさねの色目といわれています。日本人が色を選ぶ際に季節の影響を受けやすい傾向は平安時代にももう始まっていたようです。日本の伝統色名のほとんどが季節を感じられるような植物的な色名が多いのも面白いなと感じます。
江戸時代の色彩
室町・安土桃山時代にかけ、ヨーロッパでは大航海時代に突入します。鎌倉時代には平安時代の色彩の影響を色濃く残しながらも中国からの輸入品に影響を受け、新しい染織品等が出てきますが、室町・安土桃山時代の終わりころにはスペインやポルトガルの華やかな色彩の商品が日本に入ってきます。途中鎖国を行うため海外からの色彩文化は日本に入ってこないようになります。日本の文化も海外の文化も入ったり入らなかったりする時代でも色に対する制約はなくなっておらず、奢侈禁止令により、紫や紅色などの華やかな色彩の使用は禁じられていました。なので江戸時代の人々は茶色やねずみ色の中間色を多く使用し、わずかな色の違いを感じながらおしゃれを楽しんでいたようです。また、歌舞伎の影響で路考茶や団十郎茶などの色が流行しました。濃い色が禁止される一方で紺色だけは禁止されることがなかったので藍色は日本の代表的な色として定着し藍染のお店が非常に繁盛したそうです。
日本の色文化で一貫して共通していること
日本では染色は自然物、特に植物を材料に染色することが多かったことと、つい最近まで日本では使用できる色と禁止されていた色がある文化があることが共通して言えそうです。また、調べていくと四季の変化を感じながら配色を考えていた様子が伺えました。
まとめ
天皇の礼服の色に黄櫨染が使用されていたことなどからも鮮やかな色や濃い色は高貴な色、中間色や明度の高低の大きい色や彩度の低い色は日本の人に多く使われてきた色というイメージがあるのかもしれません。また季節を感じさせる配色は日本の文化に深く関わってきているため、無意識のうちに自然を感じさせるような配色や、染色の方法からも中間色などの色を組み合わせた配色は和風であると感じるのかなと思いました。時々身の回りの色について考えることで、様々な文化や歴史を考えるきっかけにもなることからも色って面白いなといつも感じさせられます。